ciguwerao

2015/07/21の記録:“Centre hospitalier universitaire de Nice” について

ジュール・ビアンキ選手が亡くなった。

大変な事故ではあったが容態は安定しているという報があったので、可能性に期待していたのだが、残念だ。

このようなニュースを元に記事を書くのはためらわれる気持ちもあるが、不真面目な内容ではないのでご寛恕を願いたい。

日本で起きた事故が原因という事もあり、多くの日本のメディアもこのニュースを報じているが、亡くなった病院の名前の翻訳に苦労されているようだ。

ご遺族からのコメントを拝見すると、 « Centre hospitalier universitaire de Nice » という名前のようだ。

多くのメディアが「ニース大学付属病院」と訳しており、そうするのが普通かと思うが、多少気になった。

気になったのは「ニース大学」の「付属」と言ってしまっていいのか、という点。

直訳すると「ニースの大学の介護センター」となるが、「ニースの大学(ニース大学)の」+「介護センター」なのか「ニースの(ニースにある)」+「大学の(大学機能を持つ)介護センター」なのか明確でない。

明確でないが、語の構造としてはCentreに形容詞が二つついてde Niceだからどちらかといえば後者っぽい。大学付属であれば明確に « Centre hospitalier de l'Université de Nice » としそうに思う。

CHUとニース大学をウィキペディアで調べてみた。

まず、CHUは1973年にニースにファキュルテドメドシーヌ(医学部)が置かれたのと同時にユニヴェルシテールになったと書いてある。ファキュルテドメドシーヌはニース大学を構成する部分と言えるだろうし、ニース大学医学部はCHUのそばにキャンパスがあるそうなので、大学と関係があるのは間違いない。

が、一方でCHUはUniversité Côte d'Azurに加盟している、としてあり、Université de Niceではない。

Université Côte d'Azurを見ると、その加盟組織の中にCHUと並んでニース大学も名があがっている。

その他の加盟組織をみる限りUniversité Côte d'Azurとは、付近の大学や研究所などが加盟する研究機関の集まりのようだ。

そこに両者が並んで加盟しているところをみると、また、ウィキペディアのCHUの記事に

Des partenariats ont été noués entre l'université de Nice Sophia Antipolis, . . . et le CHU.
(ニース大学[…]とCHUとの間にパートナーシップが結ばれた)

« l'Université Nice Sophia Antipolis » はニース大学の通称。

としてあるのをみると、組織としては別であり、やはり「ニース大学付属」とするのは適切ではないように思う。

« universitaire » ということばは「大学機能(高等教育機関および研究機関としての機能)を持つ」といった意味じゃなかろうか。

じゃあどう訳せばいいかだが、なかなか難しい。

いっそのことユニヴェルシテールは無視して「ニース医療センター」とするのがいいかと思うが、「ニース医療大学病院」としてもいいかもしれない。「センター」を残したければ「ニース医大医療センター」でもいいかもしれない。

あるいは、「付属」をとって「ニース大学医療センター」とすれば、フランス語の名前と同様に「ニース大学」+「医療センター」とも「ニース」+「大学医療センター」ともとれるようになって、関係を曖昧にできるのでいいかもしれない。

いずれにしても、きちんとした訳語は難しい。

わからないのは、ニース大学の医学部との関係だが、臨床はCHU、理論的部分は医学部で、学生は行ったり来たりするんだろう。教員はどうなってるのかな。

== 12/29追記 ==

ちょっと調べ物をしていたら « Centre hospitalier » ということばが出てきて、この記事を思い出した。

元々の調べ物とは関係ないのだが、こっちも気になったので調べてみた。まず « Centre hospitalier » というのは法的な用語で、 « Hôpital local » でも « Centre hospitalier régional » でもないもののことを言うらしい。フランスの公的医療施設はこの3つに分けられる。が、 « Centre hospitalier universitaire » は « Centre hospitalier régional » に含まれるらしい。

« Centre hospitalier régional » のうち、大学機能も付加されたものが « Centre hospitalier universitaire »。

ややこしい。

で、フランスの医師・医学研究者の養成は紆余曲折を経て国立大学に設置される « Unité de formation et de recherche de médecine » (直訳すると「医学の人材育成及び研究ユニット」)に一本化されたようだ。それによって医学部=ファキュルテドメドシーヌというものも制度上は廃止され、今そう呼ばれるのは « Unité de formation et de recherche » のことと考えてよい。その後学生の増加に伴ってまた色々あったようだが、基本はこれでいいと思われる。(ちなみに医学に限らずファキュルテというのがすべからくユニテドフォルマシオンエドルシェルシュになったみたい)

で、そのUFRの医科・歯科・薬科はCHUと一体となって教育・研究を行うらしい。この二つが完全に一体のものなのか、一応は別のものだが深い関係にあるのかが、やっぱりよくわからないが。

いずれにしてもフランスでは研究や教育も行う病院は全てCHUという名前になっており、実際フランス語Wikipédiaの « Centre hospitalier universitaire » は日本語ウィキペディアの「大学病院」にリンクされている。日本では大学病院は大学に付属するかたちをとったものが多い(と思う)が、フランスの大学病院は大学に付属しているのではなく一応別の組織・機関になっているのが違う点。大学が病院も持ってるのでなくて、病院が大学機能も果たす。

というわけで、この記事の主題である“Centre hospitalier universitaire de Nice” の訳語は、「ニース大学病院」でいい、と言えそうだ。

念のため、今日書いたことは全てフランス語Wikipédiaに依拠しています。僕が誤読している可能性がありますし、 Wikipédiaの記述が正確でない可能性もあります。

| 考察 | 12:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
  | 1/1 pages |  
ciguwerao
CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
LATEST ENTRIES
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
SPONSORED LINKS
qrcode