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2017/05/19のことば

これほど巨大で、しかも不健全な観念性をみごとに脱却した小説を、今までわれわれは夢想することもできなかった。

—三島由紀夫による北杜夫著『楡家の人びと』推薦文

食わず嫌いで三島の本を読んだことがない。

僕が唯一しっかりと読んだ三島の文章が、学生の頃古本屋でたまたま手に入った楡家の初版本の箱に印刷してあるこの推薦文なのだが、これを読むだけでも三島の非凡がよくわかる。

凡百の小説論、小説指南書を読むよりもこの三島の短い文章を読むほうが、小説の何たるかが——少なくとも筆者がそれをどう考えているかが、深く理解できる。

「不健全な観念性をみごとに脱却」は続く段落で「あらゆる行が具体的なイメージによって堅固に裏打ちされ、……」と言い換えられているが、これは僕にとって最も大切なことばの一つとなっている。

別に小説を書くわけではないけれども何らかの言説をなすときには、それが「具体的なイメージによって堅固に裏打ち」されているか、「不健全な観念性」をまとってしまっていないか、気をつけるようにしている。(と言って、それをちゃんと実践できているかどうかは、このブログを読み返すだけでもたちまち心もとなくなってしまうが)

この文章はその冒頭のことばをもじって「戦後に書かれたもっとも重要な小説論の一つである」と言ってみたくなるほどのものだと思うのだが、三島の全集にはちゃんと収録されているのだろうか。

雑誌なり何なりに載った文章を箱に再録したものならいいのだが、この箱に書かれただけのものだったとしたら人の目に触れる機会が少ないかもしれない。

多くの人が読むべき文章だと思うので、このブログに全文のっけてしまおうか、そうすると著作権の問題があるだろうし、やっぱりまずいか、なんとか読める程度に箱の写真を撮って載せるんだったら許されるか、といろいろ悩んでいたのだが、同じことを考える人はいるようで、ネットで「楡家の人びと 三島由紀夫」で検索したらちゃんと写真が出てきた。

御一読を勧める。

これを読んで以来三島のものもちゃんと読まなきゃいけないよな、とは思っているのだが、どうにも手が伸びない。

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